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2024年3月 1日 (金)

地方自治法第113条における「定足数」について(注:2024年3月5日追記あり)

 去年受けた行政書士試験に落ちてしまったため、現在復習し、少しでも苦手なところを克服すべく努力しているところです。
 今年はアガルートとは縁を切り、LECの教材である「2024年版 出る順行政書士 合格基本書」を使用しています。

 その中で、アガルートと同じことが記載されており、去年非常に疑問を感じたところがあったため、調べてみました。
 LECの教材では、510ページ欄外*4として記載されていることです。
 内容は、以下の通りです。

 「定足数は、会議開会のための要件であるだけでなく、議事要件、議決要件でもあります。」

 その元になっている記述は、511ページ(b)の定足数の原則という部分です。
 (113条1項本文となっていますが、113条には項が存在しないため、113条本文の誤りだと推測されます。後日問い合わせを行う予定です)

 113条本文は、以下のようになっています。

「普通地方公共団体の議会は、議員の定数の半数以上の議員が出席しなければ、会議を開くことができない。」

 しかし、この条文には但し書きがついております。以下に記載します。
 なお、後で参照するために条文にはない()で、要件を区切る形を取ります。

「但し、(1)第117条の規定による除斥のため半数に達しないとき、(2)同一の事件につき再度招集してもなお半数に達しないとき、又は(3)召集に応じても出席議員が定数を欠き議長において出席を催告してもなお半数に達しないとき若しくは(4)半数に達してもその後半数に達しなくなつたときは、この限りでない。」

 私が疑問を感じ、何度もアガルートの講師に質問したものの、全く的外れな回答しか返ってこなかったのが、(4)の要件です。
 半数に達してもその後半数に達しなくなつたとき、というのは、当初半数に達していたため定足数を満たしていたものの、その後退席などによって定足数を割ることになったという事であり、検索してみたところ、この但し書きに該当する時であっても議事は成立するという文章がありました。


 地方自治研究機構の、議事運営Q&A 連載54回のQ4がそれに該当します。
 この質問の中で但し書きに該当する場合であっても、議事は有効に成立すると記載されており、明らかにLECの教材の欄外と矛盾する記述となっております。

 また関連する条文として、同じ地方自治法の第179条に、長の専決処分に関する規定が置かれています。
 この中の第1項を、以下に記載します。
 113条と関連する部分には、下線を引きます。

「普通地方公共団体の議会が成立しないとき、第113条ただし書の場合においてなお会議を開くことができないとき、普通地方公共団体の長において議会の議決すべき事件について特に緊急を要するため議会を招集する時間的余裕がないことが明らかであると認めるとき、又は議会において議決すべき事件を議決しないとき」に、長が専決処分(議会の承諾を得ずに事件を処分すること)できるとされています。

 こちらについても、Webで検索してみました。
 その結果、総務省作成の「専決処分に係る論点について」というスライドの中に、下線部の答えが掲載されていました。

 第113条ただし書の場合においてなお会議を開くことができないときというのは、「出席議員の数が議長の他2名を下る場合」とされています。
 根拠となる規定がなく、Webの情報をかき集めた結果という形になりますが、2名を下回る場合は「多数決」の原理が働かないことから、議会の成立を認めることができないというのが理由として挙げられています。

 このことは逆にいえば、出席議員が2名以下になってしまうような「極端な事態」でない限り、定足数を満たしていない状態であってもただし書によって会議を開き、議決することができるという読み方が可能になります。
 そうなると、会議開催の要件、議事要件、議決要件として定足数が求められるという記述は明らかに、誤ったものであると解釈するしかありません。

(2024年3月5日追記前の、私の考え方です。もっとも後述の資料を見ることで分かるように、この時点では結論としてこうならざるを得なかったというのも、理解できると思います)

 ここまで読んでいただければ、定足数に関する記述について、LECのテキスト(及びアガルートのテキスト)の記述に問題があることは理解していただけると思います。
 この原則を守る自治体も存在していますが、それは「条例によって定足数を割ったときに、どう対応するかをあらかじめ決めている場合」であるため、定足数全般に該当する原則と呼べないことは明らかです。

 過去の自分がどうしても理解できず、理不尽であると感じていたことであるため、こうして記事にしました。
 この部分で疑問を感じている方の参考になれば、幸いです。

 

 3月2日 追記

 LECから回答があり、個人的に納得できない部分もありながらも、少なくともアガルートよりは遥かにまともな形でした。

 議決要件としてはあくまでも、定足数を満たすことが要求され、133条ただし書は「例外」とのことです。

 この部分では、アガルートのテキストは「原則」として記載されていたため、この理論が受け入れやすい形になりますが、LECのテキストにおいては「必要があります」という記載になっているため、注意が必要です。
 試験問題で「必ず定足数を満たす必要がある」という記述があった場合は×をつけるのが正しいという事になることは、知識として必要になると考えます。

 133条ただし書の要件を満たさない形を想定すると、最初の段階で定足数を満たしていない状況で、かつ招集手続きを踏んでいない状況における議決は、効力を有しないという事になります。
 ただ、議事要件という単語の意味(議事を行っている間は、常に定足数を満たしている必要がある)を考えると、こちらの方は私の書いた(4)の要件との関係で、疑問が残るとしか言いようがありません。
 明らかに(4)の状況は、議事中に退席した者が存在していた場合に、最初の時点で満たしていれば有効な議決が成立するという意味合いを有するため、これに関しては必要とされるのかどうか、少なくともweb上の知識だけでは判断できないと感じました。

 

 重要:3月5日 追記

 更に上記のことに対し、LECにもう一度質問したところ、定足数に関する制定当初の資料を得ることができました。
 これでようやく、議事要件、議決要件になりうることが自分の中では、ある程度の裏付けをもって納得することができました。

 制定時(昭和22年4月17日)の規定では、「議員の定数の半数以上の議員が出席しなければ、議事を開き議決することができない」となっており、憲法と同じく議決要件であることも明記されていたのです。
 ですが制定後間もない、昭和22年12月の改正によって現行の規定となり、議決要件である部分が削除され、現行規定に改められたとのことです。

 理由として「議事を開き議決する」という文言では「議会の選挙」(地方自治法第103条1項等)が含まれないと解釈される恐れがあったため、議決という言葉を削ったという歴史的経緯があり、そのため現行の文言では議事、議決の定足数であることは読み取れないものの、現行の文言もそれが含まれるという解釈がなされるというのが、学説の流れとして定着している(=通説、(慣習法))とのことでした。
(新基本法コンメンタール 地方自治法 という書籍に、その辺りが記載されているとのことです。機会があれば、図書館で確認する予定です)

 このことの表れとして、東京都議会会議規則第9条を考えることができるのかな? と思います。
 規則の制定権は地方自治体の「長」が制定するものであり、法律に違反しない限りにおいて制定することができるとされています(地方自治法第15条1項)。
 そして、この規則において地方自治法第113条ただし書の適用が排除されていることが、元々の規定から導かれる議事要件が原則であることから、正当化される(113条ただし書に反していても、有効な規則として扱われている)という考え方になると思われます。
(あくまでも、頭の中で整合性をとるためにこうなっているであろうという流れを記載しただけなので、もっと直接的だったり、分かりやすいものが存在しているかもしれませんが、学者ではないためその点はご容赦願います)

 Web上の情報だけでは、この辺りはどうしても入手することができず、体型的にもなっていなかった部分であるため、非常に助かりました。
 アガルートにおいては、それこそ「ご飯論法」のようなはぐらかしを行い、こちらの問いに対して資料を提供したり、きちんと答える意思が全く見られなかったことと比較すると、雲泥の差であると感じました。
 LECの方々に、深く感謝申し上げます。

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