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2023年1月16日 (月)

定款変更の誤記?

 私は、いくつかの会社の株式を保有しています。
 投資目的というよりも、一種の趣味に近い感覚ではありますが、今のところ巨額の損失は出しておらず、配当金や株主優待も含めればほんの少しだけプラスになっているかな? という状態です。

 そして、株主には配当金、株主優待とともに、株主の権利として株主総会の議決権が存在します。
 会社の重要な事項を決めるための会議であり、それは資本を出している株主の意向によって決議されるべきという発想から、設けられている制度です。

 そんな中、一社から配当金の通知(いくらなのかが記載されています)、及び株主総会の議決のためのハガキが届きました。
 この会社は株主総会において、Web上での権利行使を行っていないため、ハガキを返送する形で権利行使する予定です。
 株主総会にわざわざ行くことで、さまざまなリスクを負う必要は無いため、これ自体は全く問題ないのですが……定款(会社にとって法律のようなものです)の変更が議決に含まれており、その中でかなり気になる記載を見つけてしまいました。

 前提知識として、株主総会で決定されたことは、その総会が開かれた時点で効力が発生します。
 そのため、一定期間の経過が必要なもの(例を挙げれば、4月1日から施行される民法の規定に合わせる必要があるもの)、及び許可や認可が必要なものについては、それを条件として定款本文の効力を発生させるという「附則」をつけることができます。

 書き方としては、こんな感じになります。

 第6条 本会社の定時株主総会は、事業年度終了後3カ月以内に召集する。
 第6条第2項 当会社は、株主総会を場所の定めのない株主総会とすることができる。
 附則 定款第6条第2項の変更は、〇〇大臣の確認を受けた日をもってその効力を生じる。

 この書き方によって、第6条第2項の効力が生じるのは、〇〇大臣の確認を受けた日ということになります。

 そして、附則によって効力が発生した後は、この附則自体は存在する意味がなくなります。
 あくまでも第6条第2項の規定を、遅らせるためだけに設けられた規定であるからです。

 そのため、附則にこのような文言を加えることがあります。

 附則 定款第6条第2項の変更は、〇〇大臣の確認を受けた日をもってその効力を生じる。本附則は、効力発生日経過後にこれを削除する

 こうすることで、〇〇大臣の確認を受けた日に附則が削除されることになり、定款に附則が残らない形になります。

 

 ところが、今回送られてきた議案では、このようになっていました。

 附則 定款第6条第2項の変更は、〇〇大臣の確認を受けた日をもってその効力を生じる。本条は、効力発生日経過後にこれを削除する。

 いろいろと調べてみたのですが、この書き方では誤解を招く恐れがあると感じました。

 基本的に、附則は法律の本文の後に、「附則」という形で別途記載されるものです。
 そして、「附則第〇条」という記載になっているため、その知識を前提とするのであれば、ここで記載されている「本条」という文章は、附則のみに適用されるというのが分かります。

 ですが、法律知識のない人が読んだり、または知識が不十分(実は、私もこちらに分類されました……記事を書きながら、調べて判明したためです)であったりすると、この附則はとんでもないことが書いてあるという解釈になってしまいます。
 「附則によって、本法の効力が発生し、その後に記載されている事項によって本条(=本法)が削除される?!」

 ……実際、ネット上でいくつか調べた限りでは、「本附則は」の方の記載が中心でした。
 加えて、「本条は」を利用するパターンとして、「会社の種類変更」の事例(例:株式会社から合同会社に変更する場合の記載)で「第6条 当社は、株式会社〇〇とする」の後に、「第17条 上記定款は〇〇株式会社を組織変更する〇〇合同会社につき作成したものであり、種類変更が効力を発生した日からこれを適用するものとする。なお、本条は効力日発生後にこれを削除する。」を付け加える形(抜粋)で掲載されていました。
 このパターンでは、附則ではなく本条として第17条を付け加えたうえで、それを削除するという形をとっております。

 確かに、附則も「条文」として独立した形式をとっているのは事実です。
 ですが、今回の株主総会の招集通知の場合、単に「附則」とだけ書いてあり、「附則 第1条」という記載になっていませんでした。
 そのことから、より私のような誤解、本条そのものが削除されるという考えを生む書き方になっているのではないかと感じました。
 誤解を招かないようにするためには、やはり「本条」ではなく、本規則」と書くことで、削除される範囲を明確にする必要があると思います。

 行政書士ではなく、この知識が必要になるのは司法書士の方だと思います。
 ですが、自分自身への備忘録も兼ねて、記事にさせていただきます。

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